2025/05/07
海外大学からどう採る?――“グローバル人材採用”の戦略設計と現場実行のリアル
なぜ今「海外大学」なのか?~企業のグローバル展開と採用ニーズの変化
企業のグローバル展開が加速する中、国内市場の人口減少や採用競争の激化を背景に、海外大学卒業者や現地学生への関心が高まっています。
特にビジネス職においては、多様な文化背景を持ち、語学や異文化適応力に長けた人材を初期段階から組織に取り入れることで、海外事業の拡張に必要な“地力”を早期に育成することができます。
また、海外の大学で学ぶ学生は、すでに海外生活を経験しているため、将来的な駐在や海外出張への心理的なハードルも低く、企業のグローバル戦略にフィットしやすい傾向があります。採用戦略における「海外大学」は、もはや“特別枠”ではなく、“本流”の一部と位置づけられる時代に入りつつあります。
リクルーティング戦略はどう組む?~ターゲット選定と設計プロセス
海外大学から人材を採用する場合、まず明確にしておきたいのは「どのような能力・志向性を持った人材を、どの地域から採用するのか」というターゲティングの設計です。
・現地法人で活躍できる即戦力を採るのか?
・将来の海外駐在を見据えた“育成前提人材”なのか?
・日本本社でグローバルな役割を担う人材なのか?
これらを明確にした上で、対象とする大学群(例:米国のTOP校、東南アジアの新興大学、欧州のMBA等)を選定し、採用スケジュールを逆算して設計していきます。海外大学の卒業時期は日本とは異なるため、プロセスの設計を誤ると応募のタイミングを逃すこともあります。
また、現地の学生と接点を持つには、ボストンキャリアフォーラムのような大型イベントだけでなく、大学キャリアセンターとの提携、現地学生団体とのネットワーキング、SNSでの情報発信なども視野に入れる必要があります。
施策は「設計」で決まる~海外大学向け採用プロセスの最適化
海外学生にとって、日本企業の選考プロセスは“馴染みのないもの”であることが多いです。
エントリーシート、複数回の面接、SPIなど、国内では一般的なプロセスも、現地学生にとってはハードルに感じる可能性があります。
したがって、海外大学向けの採用においては、プロセスの「わかりやすさ」「柔軟性」「スピード感」が極めて重要です。
・選考フローは簡潔かつ短期集中で
・英語対応ができる面接官を事前にアサイン
・1人ひとりの背景にあわせた柔軟なクロージング施策
たとえば、米国在住の学生には時差を考慮した深夜の面接設定や、ファーストコンタクトからオファー提示までを1か月以内に設計するなど、ローカル事情を踏まえた丁寧な設計が成功率を左右します。
採用は“点”ではなく“線”~イベント・コミュニティとの接点づくり
海外学生との接点は、単発の採用イベントだけでは不十分です。現地大学や学生団体と中長期的なリレーションを築き、“企業としての信頼”を醸成していく姿勢が求められます。
たとえば、毎年定期的に開催する企業説明会、OB/OGとの座談会、現地インターンシップの実施などが挙げられます。また、LinkedInやWeChatなど、国・地域によって適切なチャネルを使い分けることもポイントです。
特にアジア圏の大学においては、リクルーターが学生のコミュニティに“入り込む”ような活動が功を奏するケースもあり、採用チーム側の“現地理解度”がそのまま成果に直結します。
採った後が本番~定着と活躍に向けた人事の準備
採用はスタートに過ぎません。海外大学出身者が組織に定着し、活躍していくには、入社後のオンボーディングやメンタリング体制が重要です。
・言語面や文化面での“浮き”をどう防ぐか?
・他の新卒との処遇のバランスはどうするか?
・海外学生のキャリアパスや成長支援はどう設計するか?
これらの問いに先回りして対応することで、採用したグローバル人材が「自分らしく働ける」環境をつくることができます。たとえば、社内の外国籍社員とのメンター制度、異文化交流イベント、キャリアパスに関する早期の対話機会なども効果的です。
また、定着支援と同時に“次年度以降の採用活動”へのフィードバックを得る機会にもなります。採用した学生の声を起点にプロセスや施策を見直し、より質の高いグローバル採用へと改善を重ねていくことが可能です。
海外大学からの新卒採用は、まだまだチャレンジングな取り組みかもしれません。
しかし、そこには新たな市場や価値観を受け入れ、自社の進化につなげる大きな可能性があります。
自社らしいやり方を模索しながら、“点”ではなく“線”で向き合うグローバル採用を、ぜひ戦略的に進めてみましょう。
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