2025/04/04投稿者:スタッフ

グローバルに拡大する労務機能──海外駐在員対応を支える人事の役割とは

海外事業を拡大する日本企業が増える中で、「人事・労務」の役割にも変化が求められています。特に、海外駐在員制度や赴任・帰任対応など、これまで総務的に処理されていた業務が、今では経営・人事戦略と密接に結びついたテーマとして再注目されています。

 

本記事では、グローバルに拡大する企業における労務機能の進化と、海外駐在員対応を支える人事の役割について掘り下げていきます。

 

海外駐在員対応は“総務的業務”から“戦略的人事機能”へ

かつては「ビザ手配」「社宅の手配」「赴任手当の調整」といった事務処理的な印象が強かった海外駐在員関連業務。しかし、近年では以下のような観点で、より戦略的な視点が求められるようになっています。

  • 各国の労働法・税制・保険制度に適応した制度設計

  • 渡航前後の安全衛生・健康管理体制の整備

  • 現地HRとの協働によるグローバル統一ルールの策定

  • 帰任後の人材配置やキャリア形成との連動

また、駐在員が単なる「現地派遣要員」ではなく、将来的なマネジメント人材や、拠点間をつなぐ戦略的リーダー候補として捉えられるようになってきたことも背景にあります。

 

 

労務部門のグローバル対応力が問われる時代に

複数カ国で事業を展開する企業においては、グローバル人材の移動や働き方に柔軟に対応できる労務機能が欠かせません。

  • 国ごとに異なる労務慣行や規制を踏まえた駐在制度の構築

  • 多国籍HRとの連携、英語でのコミュニケーション

  • 拠点ごとに異なる実態を本社視点で統合する力

例えば、ある国では所得税の課税タイミングが赴任者に大きな影響を及ぼすケースもありますし、別の国では住宅契約の法的拘束力が強く、解約時のペナルティ対応が制度設計上のリスクになることもあります。このような複雑性に対応するためには、単なる規定の知識ではなく、実務経験と海外専門家との連携スキルが必要です。

 
 

海外駐在対応の“実務”と“制度”のバランス

実際の現場では、以下のようなオペレーションと制度設計がセットで動いています

  • 駐在員のビザ・就労許可取得、社宅・引越し手配

  • 海外手当や赴任費用、税務処理の設計と対応

  • 安全衛生・感染症対策、健康診断の手配

  • 赴任前後のオリエンテーション、家族対応

  • 現地での就労管理・勤怠・休暇制度の整備

  • 帰任後の受け入れ体制、キャリア支援

さらに、制度設計の面では、以下のような要素も重要です

  • 本社・現地双方の報酬体系の比較と調整

  • 為替リスクやインフレ対策を踏まえた補填制度

  • 国際人事規定(Global Mobility Policy)としての整備と改訂プロセス

制度と運用、どちらが欠けても機能しません。人事部門には「戦略の実現」と「現場での回る仕組み」両方を設計・支援する能力が求められます。

 

働き方改革・Well-beingと海外労務の接点

近年では「海外駐在=タフな環境」という前提を見直し、健康経営・Well-beingの観点からも海外労務が再設計されています。

  • 現地でのメンタルヘルス支援やカウンセリング体制

  • 単身赴任・帯同家族への配慮

  • 勤務時間・業務量の調整とモニタリング

また、労務部門が積極的にヘルスケア担当や産業医、EAP(従業員支援プログラム)と連携するケースも増えており、「安全配慮義務」の観点だけでなく、従業員エンゲージメントや長期的パフォーマンス向上まで視野に入れた設計が求められています。

 

グローバルに広がる“労務”の可能性

人事制度や働き方が急速に変わる中で、労務部門も「守りの機能」から「攻めの支援部門」へと変化しています。

  • 海外労務を担うことで、企業の海外展開戦略に人事の立場から貢献できる

  • 海外赴任制度は、経営・事業・従業員の3者にとってバランスが問われる領域

  • グローバル対応の中で、自社の価値観と地域ごとの文化の両立を図る設計力が求められる

こうした海外労務の整備は、単なる制度対応ではなく、会社の成長を人事面から支える重要な取り組みです。