2025/04/03
グローバルHRシステム導入のリアル──Localと本社の“摩擦”をどう乗り越えるか?
グローバル展開を進める企業にとって、HR(人事)システムの統一は避けて通れない課題です。人事データの一元管理、制度の共通化、評価基準の明確化などを目的に、本社主導で新たなシステムを導入しようとする動きは多く見られます。
しかし、実際に導入を進めていく中で、各国・各拠点との“摩擦”が表面化するケースは少なくありません。現地の事情、文化、制度への理解不足が原因で、システム導入がうまくいかずに終わる企業も存在します。
この記事では、グローバルHRシステム導入の現場で起こるリアルな課題と、それをどう乗り越えていくかを掘り下げていきます。
なぜグローバルHRシステムの導入が必要なのか
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海外拠点が増えると、人事情報がサイロ化し、経営レベルでの人材戦略が立てにくくなる
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各国でバラバラの評価制度・等級制度・報酬体系を運用しており、全体最適が図れない
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M&A後のPMI(統合作業)やガバナンス体制構築を加速させるためにも、一元管理の仕組みが必要
このような背景から、WorkdayやSAP SuccessFactorsなどのHRシステムをグローバルに導入する企業が増えています。
導入現場で実際に起こる“3つの壁”
① Localの既存システムや慣習との摩擦
「これまではExcelとローカルベンダーで十分回っていた」──このような声はよく聞かれます。
現地拠点は、業務の効率や現地従業員の慣れを重視しており、本社からの一方的な変化には慎重になりがちです。また、タイムゾーンや言語の違いが、意思疎通のハードルを上げてしまうこともあります。
② 本社側の「押し付け」リスク
グローバル標準と称して、本社の制度や評価体系をそのまま海外拠点に当てはめようとする動きも見られます。しかし、現地の法制度や文化と乖離した制度設計では、現場の納得感が得られず、運用が形骸化するリスクが高まります。
③ 全社巻き込みの難易度
本社と現地の間に立つHR担当者は、「双方の言い分」を理解し、調整する役割を担う必要があります。しかし、拠点ごとに温度感が異なる中、全社を横断してプロジェクトを推進するには、強い巻き込み力と粘り強さが求められます。
導入プロセスの流れ(簡易ステップ)
グローバルHRシステムの導入は、一般的に以下のようなステップで進められます:
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現地ヒアリング・As-Is分析:各拠点の現行業務、制度、IT環境の把握
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要件定義・Fit&Gap分析:本社の方針と現地のギャップを明確化
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PoC・パイロット導入:一部拠点で先行的にシステムを導入し、効果や課題を確認
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グローバルロールアウト:段階的に他の拠点へ展開しながら、運用定着を図る
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運用・改善フェーズ:導入後の課題を継続的にフォローし、制度と運用の改善を繰り返す
このプロセスを丁寧に踏まなかった場合、導入後の混乱や定着失敗につながる可能性があります。
ありがちな失敗例とその回避策
・現地を巻き込まずトップダウンで進めた結果、反発が起こる
→ 初期段階で現地の声を拾い、PoC段階で成功事例を一つ作ることが重要。
・現地の法規制・習慣を軽視して制度を設計した
→ 労働法や報酬制度の違いを専門家と共に精査し、現実的な制度調整が求められる。
・導入後のトレーニング不足で活用が進まない
→ 単発の説明会ではなく、継続的なサポート体制と「現地主導の教育体制」構築がカギ。
成功するグローバルHRシステム導入のポイント
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初期段階から現地拠点のキーパーソンを巻き込む:現地視点を設計に反映することで、導入後の定着率が大きく変わります。
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「共通化する部分」と「ローカル最適に留める部分」を峻別する:報酬制度や勤怠ルールなど、各国での柔軟性が必要な領域もあるため、やみくもな統一は逆効果です。
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現地との対話をベースにした双方向型の設計プロセスを取る:ワークショップ形式などを通じて、現地と本社が“共に設計する”空気感をつくることが重要です。
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グローバルHRBPの存在が鍵:単なるシステム導入ではなく、事業戦略と人事戦略をつなぐ視点を持つHRBPが推進することで、導入の意義が明確になりやすいです。
変化を生む“HRシステム導入”の意義
グローバルHRシステム導入は、単に情報を一元化するための「ツール導入」ではありません。各国の人・制度・文化を理解し、組織全体を“人”の観点から最適化していく取り組みです。
導入プロセスそのものが、HRの在り方を問い直し、現地拠点と本社の関係を再構築する契機になります。
人事が“現場の調整役”から“経営戦略の実現者”へと進化するための重要な一歩、それがグローバルHRシステム導入とも言えるでしょう。
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