2024/09/15
【中編】なぜ日本はこんなにも採用コストが高いのか? | 人材不足だけではない独自の文化的背景-
【前編】なぜ日本はこんなにも採用コストが高いのか?では、採用コスト高騰の要因は人材不足だけではなく、そもそも日本では、人々の”転職活動に対する秘匿性”が高い、という点を取り上げ、その要員の一つである、新卒一括採用文化につき他国比較をしました。
中編ではこれに加え、(転職時の)個人情報に対する意識の違いを表す、ひとつの例を紹介します。
(転職時の)個人情報に対する意識の違い
転職意欲が顕在化したユーザーの行動動線は日本も海外も大きく変わりなく、求人ポータルサイトが大きなシェアを締め、そこに企業やエージェントなどの求人供給者が集う形が主流となっています。
日本においては多くの場合、自身で応募するあるいは、スカウトメールに返信をする等の行為を持って初めて求人企業側に個人情報が提供されます。
一方、欧米やアジアの大手求人サイトの一部では、ユーザーの多くが自身の氏名、連絡先などの情報が記載されたレジュメがサイト利用企業に”ダウンロード”され、電話やメール等で直接的に連絡が来る事を許容しているサイトが存在します。
この点に、日本との大きな違いがあると言えます。例えると、「レジュメダウンロードの許可」が「スカウトメールを受け取る」にチェックをする程度の感覚でしょうか。
応募を待つのではなく能動的に採用活動を行いたい求人企業側の機能として、日本ではスカウトメールが一般的ですが、この機能が 「Resume Download」 として、希望するレジュメを必要な数だけダウンロードでき、その情報を元に直接アプローチするという方法で存在する事自体が、(転職時の)個人情報に対する意識のそもそもの違いを表していると言えます。
タレントプール構築の難易度に大きな差
勿論、海外でも一定のコストをかけなければレジュメを集めることはできませんし、直接コンタクトをとったからといって必ずしも採用プロセスに加わるとは限りません。
ただ、多くのスカウトメールを送った中から返信があった人とだけコンタクトできる環境と、欲しいと感じたレジュメは企業努力により手元に揃える事ができる環境とで、タレントプールの構築(ここでは、短期長期問わず自社の社員や求職者になり得る人材の自前データベースを構築する行動を指します)の難易度に差が生じる事は明らかです。
また、先述したようにそもそも転職活動に対する、人々の意識の差から、突然FacebookやLinkedinで仕事のオファーが来ることに対しても、あるいは数ヶ月前、1年前にやり取りをした人事担当から状況伺いの連絡が来ることにも海外では抵抗が少なく、より、企業努力次第でタレントプールがしやすくなるという好循環を回す事が可能です。
一方、日本ではまだ、自分の情報が採用対象タレントプールとして保管されキープインタッチされたり、あるいは急に自身のソーシャルアカウントから求人についての情報を受け取ることに慣れていない、あるいは抵抗がある人が多いのではないでしょうか。
後編では、そういった独自の慣習・風習の中でいかに攻めの人事・戦略人事としてタレントアクイジションを構築すべきかについて説明していきます。
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