2024/07/10投稿者:スタッフ

【前編】なぜ日本はこんなにも採用コストが高いのか? | 人材不足だけではない独自の文化的背景-

-日本は労働人口不足だから採用単価が高い。

 

そんな風に考えていませんか?もちろん、その理由も大きいですが、それ以外にも日本独自の文化、歴史的背景が大きく起因しています。

 

企業は生産性を重視し、個人も自身のキャリアを重視する傾向とはいえど、日本ではまだまだ、ひとつの会社に長く在籍する事が良しとされる文化が根強く残っています。これを催しているのは、日本独特の新卒一括採用文化の影響と、個人情報に対する意識の高さが大きいとされています。

 

ここではまず、世界各国での新卒者の就職事情をいくつかご紹介します。

アメリカ

  • アメリカでも将来のキャリア模索に熱心な者は大学・大学院に在学中から学内で開催されるキャリア・デベロップメント・セミナーなどに積極的に参加、そしてジョブインタビュー(いわゆる面接)を行う現状が見られる。これは転職を繰り返しキャリアアップをすることが一般化している為で、十分な学位を得た暁には一年でも早く職業訓練を受けて職歴を身に付け、将来の転職を有利にするための一つの方法である。採用時期は企業にもよるが一年を通して不定期で行っている場合がほとんどで、ポジションに空きが出たり好景気によりさらなる雇用が必要な場合は随時募集が行われる。

ドイツ

  • ドイツの学生は卒業後、就職活動を開始するのが一般的。大学の教育の一部に、企業での実務実習が組み込まれている事も多い。特に新卒者用の求人はない。新卒者の多くは、最初の1、2年間は期限付きの雇用契約しか結べないことが多い。

 

フランス

  • スタージュと呼ばれるインターンシップ制度が充実していて、これにより職務経験を得て就職することになる。インターンシップ後、正式採用されることもあるが、期限付きの雇用契約しか結べないことが多い。

韓国

  • 新卒一括採用があるが、新入社員募集時の年齢差別禁止が義務付けられるようになった。2009年から施行された年齢差別禁止法では、事業主が社員募集広告を出す時「xx歳以下」等の年齢制限をすると罰則または過怠金を受けることになる。この法が施行されれば募集・採用で退職・解雇に至るまで、雇用のすべての段階で、年齢を理由とした差別行為が禁止される。例えば、募集・採用広告に「xxxx年度以後出生者」、「満30歳以下」、「満25 歳以上29歳以下」 「2009年卒業(予定)者」、「大学卒業後2年以内」のような表現が入っていると差別になる。

 

-以上 Wikipedia 新卒一括採用 より抜粋 –

上記は数カ国の例にすぎませんが、日本のように横一線で就職活動、新卒採用を実施する国はそう多くはありません。新卒一括採用が若年層の失業率を押し下げている側面もありますが、一方で、大学卒業後すぐにレールが敷かれている事が、そこから離脱する事への後ろめたさに繋がっているとも言えます。

 

このような背景がある中で、日本において堂々と転職活動をする人は少なく、隠れるように転職活動をする事が多いのではないでしょうか。

 

「自分は良い転職先があれば、いつでも考えている」と表現しやすい海外に比べると、その秘匿性や、そもそも腰を落ち着ける事を重んじる日本では、転職ニーズがある個人を獲得する事が海外と比較して困難になっていると言えます。数あるライフイベントの中でも、比較的真剣度が高いもの、例えると「家を買う」事と同じぐらい重要なものと捉える傾向もあり、採用企業側からすると、転職したい個人の情報を獲得する事が海外に比べてハードルが高いと言えます。次のコラムでは、(転職時の)個人情報に対する意識の違いについても見ていきたいと思います。